8番倉庫

長文置き場

金カム186話「忘れ物」感想

ウワアアアーッ!!肩甲骨占い!!!!!(頭を抱える)
表紙では尾形祭りの17巻の宣伝に隠される、歯茎とかに毒が入ったら嫌な人。こないだの鳥ハントの表紙といい、平和だったかつての風景をさあ…切り取ってくるよね…切ないっすわ…

直球勝負

勢い込んで銃を構えたものの吹雪で杉元の姿が見えず、狙撃は不可能!
むしろ前回視認出来たのも一瞬だったろうに、よく不死身の杉元と確信出来たな。私なら蜃気楼的な何かかと思うね。まあこの二人はお互いに対し謎のテレパシーを備えているからな。
なまはげがすぐそこまで来てるし親分は呼んでるし、もうあとがねえッ!!という状況で、とうとう大ウソをつく尾形にゃ…あっ、あれ? いや、これ…ウソではないな…?
「杉元とのっぺら坊が撃たれた時キロランケがどこかに合図していた」のは事実だもんな。いやお前にやんけってとこを伏せてるだけで。
一休さんかお前は。
何とんち効かせてんだよ!! 隠し事はするけど嘘はつかないという縛りでも設けてるの?先週のやりとりでウソついたら失敗したから方針転換を…いや待てよ、先週のも別に嘘ではないな…?「アイヌのことはキロランケやソフィアに任せればいい」とだけ言ったんであって、「残りの金塊で何とかするだろうから任せろ」とは言ってないもんな?
尾形が言ってるのはただ「思い出した金塊の鍵を一人で背負いこむのは危険だしお前にメリットないからさっさとゆえ」という一点のみだ。そしてそれは嘘じゃない…なんというやつ…法律に触れない悪徳誓約書のような叙述トリック使いやがる…
ところで「ウイルクが撃たれた時キロランケがどこかに合図していました」っていうインカラマッの台詞とモロ被りなのが地味にツボる。なんかこの二人ってちょいちょい印象被ることない?気のせい? 頭に傷のある男性は大好きです、なんつって。
アシリパ連れて逃げながら、かつてなく焦ってチラチラ後ろを伺う尾形にゃん。すげえビビってんじゃん!!杉元こええんだよやっぱり!!!
気もそぞろな中、あの狙撃にキロランケが関わっていたとは思いも寄らなかったらしいアシリパに、わけわかめなキロランケの行動をざっくりと説明。「アシリパが父親だと確認するのを待って誰かに狙撃させた(すっとぼけ)」誰だろう!!!!????
「ウイルクとの間に何があったかは知らんがおおかた金塊の用途で揉めていたんだろう」このコマ、説明しながらめっちゃ後ろ凝視しててシュール。
ていうか徐々に語られるキロランケたちの過去と青春、渦巻く情念を聞き知りながら、鍵たるアシリパの様子伺いつつ、本人こんな身も蓋もない感想を抱いてたの!?「なんかしらんけどおおかた金の使い道でモメたんやろ」って思ってたの!? まあ正しいんですけど。
そして「なんでそれを今まで私に黙ってた?」という問いに、めっちゃ正直にありのまま答える尾形。
「お前がさっき思い出したからだ(そうだね)それにはキロランケの協力が必要だと考えたから今まで俺は黙って様子を伺っていた(本当だね)俺は金塊が手に入れば何だっていいが(ぶっちゃけすぎ)これ以上キロランケと組むのは危険だ。お前だって鍵聞き出せば消されるかもしれんぞ。俺や白石だってその可能性はある(これも本音だろう)」
樺太編じゅう得体が知れなかったくせに、喋って構わないとなったらめちゃくちゃ明快に喋るね君!? 黙るべきところで黙れる人って素敵だと思います!!
でも実際尾形にとってのキロランケが「金塊の使い道でかつての仲間だったウイルクと揉めて殺した過激派テロリスト」というなんかヤバい存在でしかないのなら、パルチザンの戦いに付いてこない協力者たちをどうするのか、その処遇に希望が持てないのはまあ事実でしょうね。馬に関する情に弱い部分とかも尾形は見てないし。
よく考えるとめちゃくちゃ筋が通ってるな? 前回の「じゃあどうしてキロランケから離れたところで聞くんだ?」に対し⇒キロランケは危ないやつだから
「どうして今まで私に黙ってたんだ?」⇒思い出すまではあいつが必要だと考えたから
非の打ち所のない論理だ!?(混乱)
そして面と向かって駄目押しの火の玉ストレートを投げる尾形にゃん。
アシリパ教えてくれッ。何を思い出したんだ!?」素直~~~~~!!!!
いいよぉ!いい球投げてるよぉ!こんなにはっきりと誰かに「ちょうだい」って言えたの初めてじゃない!?成長してる!成長してるよ!!そうやってさ!!ぶつかっていくんだよ!!結果なんかいいんだ!!勇作殿のバーカ!!っつってさあ!!!(尾形は結果を出そうと頑張っています)
ここぞという時の素直さに定評のある尾形。もうさあ、悪い想像をしようと思えばいくらでも出来たわけですよ。まさか攫ったりとか脅したりとか人質とか…!?と、鍵を聞き出すための悪行の限りをさ。でも実際は手引いてこっち来てっつって連れ出して改めて真正面から「たのむおしえてくれ!!」ですよ。正攻法にも程があるだろ!?もうやだ尾形ってほんとうにカワイイ。キロランケvs谷垣の男同士の鬼気迫る死闘との落差に心がついていけない。
キロランケもインカラマッにマキリなんか突き付けないで「頼む黙ってくれ!!」ってクソ真面目にお願いすればこんな悲劇は起こらなかったのに…(馬鹿にしてんのか?)
『はやく聞き出さないと…奴に追いつかれる』寒いなか息を白くして冷や汗をかき、てんやわんやの尾形にゃん。めっちゃこのコマに後ろ振り返ってた時の「チラチラ」みたいな文字で「はわわ…」って書きたい。
すごくないすか? 一晩中スコープされながら一秒後には死ぬかもしれない状況を微動だにせず耐えしのいだ男をここまでビビらせる杉元すごくないすか? やっぱ不死身だからかなあ。殺して全部終わらせちゃった尾形だからこそ、死なない存在ってものが人知を超えた恐怖なのかもしれないですね。親殺し=神殺しもやってのけた尾形百之助の、この世で最も怖いもの…それは不死身の男。
多分尾形の作中怖いものランキングをつけたら杉元>ヒグマ>幽作どの>サクソモァイエプ>姉畑だと思う。
なんか改めてアシリパと尾形のコンビってかわいいなと思いました。焦り具合が均等なんだもん。
追い詰められて涙目?で口を閉ざすアシリパ、それ以上に追い詰められてあわあわする尾形…選べない!(?)

男の戰い

ああああ~~~ッ…。「運命は変えられる」のコマで…キロランケも…居たんですよねえ…。
あの時キロランケは二人を助けたんだよなあ。刺すつもりは…と言っていたキロランケは、この状況に、どこか諦めがついているような表情でもあり…。
…いいやつだったよな…(お通夜ムード)
誰かが後ろから来る、は谷垣のことで、その後の死という結果がコレ、だったわけだ。でも運命は変えられるのなら…あの占いも…変えられる…のでは…?(探り探り)
それにしてもチカパシとの会話では内心が読み取れず、網走出発からずっと理性的だった(?)谷垣ですが、いざ仇を前にして、この猛然たる怒り…。日本男児って感じ。そして己を選んだインカラマッの顔が浮かんで力が湧く所なんかはもう本当に、情で動く男だなあ…と。
でもなんか悲しいですね。虚しいというか…。どちらも譲れぬ“男”で、だからこそこうなってしまった因果が…。
それにしても運のない男だ。これからどうするんだろう。ソフィアもさあ…待ってるのに。

金塊の鍵

尾形がスギモト来てる超やべえと焦る一方で、杉元も白石と共に流氷で流されて超やべえと焦っている中、本当にやばいことが金塊の鍵と関係ない所で起こっているというしっちゃかめっちゃかな状況になってきましたが。
アシリパだけが持つ、金塊の鍵…なんかもう尾形がカワイイからとかでなしに、教えちゃえばあ?という気分になってくる。いや尾形がカワイイからとかでなしに。
「ソフィアたちが心配してる、戻らないと」と言って、そうして答えを先延ばししてダラダラと一緒にいて、行き着く先はサンクトペテルブルクですよ。行けば行くほど戻るのは難しくなる。ましてやアシリパ一人じゃもっと厳しい。合流したパルチザンに迎え入れられ、協力して極東連邦国家建設計画に乗り出しロシア帝国と戦う羽目になるかもしれない。一体何年がかりになることやら。それはアシリパの本意なのか?
それに「この“殺し合い”から『上がり』だ」という尾形の言葉は、本当にその通りだと思うんですよね。この金塊争奪戦の鍵をアシリパ一人の身で背負うということが、子供の身に“重い”というよりは、もっと単純に怖すぎる。
このまま関わってたらニカイドウみたくなるぞ、というのは過ぎる脅しかもしれませんが、でもどんどんボロボロになっていく二階堂の存在はこの争奪戦の象徴のようなもの。網走監獄の囚人全員と看守を“駆除”と称して皆殺しにする鶴見の率いる、まさに狂ったように走り続ける第七師団の連中。
己の思想が正しいことを疑わず、アシリパを意志ごと取り込もうとする、譲らない国家反逆者たち。新聞を使って民族蜂起のための偶像に祀り上げようとする土方、袂を分かつ前のウイルクの座へ祀り上げようとするキロランケ…
アシリパも把握し切っていないそうした暗い側面の色々を考えると、「コタンに帰って婆ちゃんに元気な顔を見せてやれ」ってハッキリ言う尾形の言葉がえらく魅力的に思えてきてしまう。確実に何かを隠している尾形に渡してしまって、何かが起こったとして、それを今後の人生アシリパは一生悔いることになるとして…でもそもそも、そんな責任を負わされること自体が不合理なはず。「お前がそんな重荷を背負うことはない」んですよ。
ていうか尾形って唯一色んな派閥の相手に「帰れ」ってリタイアを薦める存在ですね。初対面の杉元に「どれだけ恐ろしいものに手を出しているか知らんのだ。あの戦争で拾った命はカネに替えられんぞ」って促して、谷垣に「秋田に帰れ」って突き放して、アシリパにもコタンに帰れと諭して。思えば良心的よな。これだけ帰れ帰れ言うのは尾形自身に帰る所が無いからかな?
何にせよ「カギが本当に私にしか解けないものなのか確認する必要がある」はクリアしたわけだから、「その呪われた金塊は本当に見つけるべきか、それとも闇に葬り去るべきなのか」の答えを出す段階まで進んでいる。
使い道を選ぶ気があるなら、求める目的を聞く必要がありますが…尾形のそれは既に「戦った分の報酬が欲しいだけだ。全部は要らない、のんびり暮らせるだけあればいい」と答えをあらかじめ提示されてしまっている。
「国を作れるほどのカネなんていらん」というのは、尾形の言う通り白石や、杉元と同じ主張。少しだけ欲しいと望む相手を厭うことは、杉元の二百円への拒否にも繋がるもの…。
で、もう杉元にも悪いが火種自体を無くすべきだと、初めから無かったものとして金塊を葬ろう…としたところで、一人でどうやって葬るのか。黙り続けることは、鍵であることを知られている以上できない。それに鍵は確かに持っていたとはいえ、それがどれだけ独占性のある情報なのか…中尉も暗号解読に着手しているし、杉元も何かに気付いた様子を見せている…
言ってしまえばもう二人には持ち時間がない。長考はできない、もう決めなきゃならない。尾形は手を打った、アシリパはどう出るのか?
一番金塊に近いところに居る二人が、一番崖っぷちにいるとは何となく皮肉な感じがしますが。ただ尾形は崖っぷちですけどアシリパにはまだ起死回生の杉元という存在が近くまで来てますからね。「最後まで俺がついてるから」とガンガン行こうぜを選択して、手を離してしまい俺は役立たず…と打ちひしがれるダメ保護者杉元が…(ひどい言いよう)
杉元なら信用できるかもしれない。杉元だけに鍵を教えるか。そして二百円を持って一緒に彼の故郷に行き、残りは知らないと手放すか。それとも見つけた時点で争いの種になってしまうから、教えずに一緒に金塊を葬ることを選んでくれと頼むか。その選択が、アシリパに出来るか?
正直今のアシリパの手に負える問題ではないように思う。荷が重い。詰んでいる…なら、いっそ渡しちゃえよもう、という気持ちになるんですがね。秘密を抱えていても、尾形の言葉は正論だよ。でも、また断られちゃうんだろうな。「父上の言いつけなのです」っつって。ハハッ…ハッ…

はやく聞き出さないと

「金塊が手に入れば何だっていいが」といい、この焦りといい、やっぱ何らかの任務なのかな?という感じがしてきましたが。中央の飼い猫?だったら有坂閣下とグルだといいなあ~~(まだ言ってる)
いや鶴見中尉のところに「金塊の鍵はいらねえかい」とドヤ顔凱旋するパターンも捨てきれませんけど。でも網走で「怪しいぜあのジイさん」とキロランケに言われていた土方にまだ明かされてない謎があり、用心棒契約が切れてない可能性も残ってるな。つまりどの線も消えてないんだよ!!このコウモリ野郎!!
でもキロランケとあんまり詳しいとこまで把握した間柄じゃなかったっぽいのは分かったかな。あとアシリパの言っていたこの樺太旅の目的の中で、まだ明らかになっていないのが一つだけ残ってる。“どうして父がのっぺら坊になったのか?”
どんどん明らかになっていく謎の中で、残る謎と尾形の謎の間に関連があるのではないか…という想像も起こってくるのですが。「まさか…のっぺら坊の娘なのか?」という驚きの真意も明かされることになるでしょうし。未だ残る空白である“あの顔になるまで”が、今後どうやって埋まっていくのか?
あとウイルクが回想で言っていた「ロシア政府から漏れてきた“ある情報”」というのも…それが金塊のことだとしたら、ウイルクが関わる以前から国家レベルで金塊の存在は把握されていたということになるけど。
第七師団も自刃の責任問題のせいで金が貰えませんでしたが、軍自体も日露戦争後で金なんか無いわけで、中央も金が欲しい筈ですよね。今の金塊にこだわる尾形の姿勢は、月島が言っていた「我々が大きい獲物になるまで待ってる」という理由とは外れている…
まあ金塊の鍵が“必要”らしいと分かっただけで前進だな。何にせよ、ひとつの山場ですよね今はね…真っ当な理屈を重ねて説得した今、アシリパの断る理由が「父の言いつけだから」以外に残っていないという恐ろしい事実に気付いてしまったので、続きが怖いです。
「夢というのは、カムイが私たちになにか伝えたくて見せるものと強く信じられてきた」あの夢が尾形の今後を占うものであることは確かだろうから…
しかし踏みとどまれ尾形。熱病のさなか悄然としながら勇作殿を遊郭で誑かそうとした記憶を想起していたのは、あの記憶が尾形の深層心理の中で、ひどいことしたなあっていう悔いを残しているものだったからだと思ってるんですよ。勿論まるきり性質の違う相手に足掻いていた虚しさとか、そういうのもあるんでしょうけど。
呪いとして奥底にこびりついた罪悪感を、これ以上こじらせるようなことにならないよう祈ってるよ…杉元も元気に怖がられつつ生きてほしい。そして願わくばキロランケもイ㌔。トラを殺せばその人間の人生は不幸になるという言い伝えで、谷垣の先行きも暗くなってしまうもの。いやあ~やっぱ、殺し合いってよくないですよね(小並感)