8番倉庫

長文置き場

256話「篤四郎さんの一番」感想

殺す気満々の素早い挙動においても激情の欠片も見せない、相変わらずの殺人マシーン尾形!
ボロボロでもあくまでクールに弾丸装填する姿がかっこいい。
「百之助なんぞに…かまってる場合じゃない」
まんまと返り討ちに遭いながらも、格下の雑魚扱いを貫くのはある種の意地のあらわれか。
冷静になっても後の祭り…激昂してぶつけた宇佐美の暴力と罵倒に対し、尾形からの回答は非常にシンプル。
「安いコマかどうかそんなに不安なら」
「お前の葬式で鶴見中尉がどんな顔をするのか見たらいい」
お、尾形~!!!
なんというブレない男だ。母の死(と自分の母殺し)を引きずっていると言えばいいのか、父の在り方(と自分の父殺し)を引きずっていると言えばいいのか、己と違い祝福された弟の存在(と自分の弟殺し)を引きずっていると言えばいいのか…
そして尾形百之助ここにあり!!というようなこのセリフとシチュエーションで放つ弾丸が、尾形を狙撃手としての完成された境地へと誘う。業が深いにも程があるだろ!!
杉元ハラキリショーのお陰で再び馬で逃走する宇佐美を捕捉、アハ体験のようなスーパーミラクル角度から銃口を向ける尾形。
それにしても逃走手段に馬を選んで死ぬというのはなんだか因果ですね。トモハル君?を殺した時に罪もない馬をアリバイのために確か犠牲にしていましたが。利用したものはその者の救い手とはならないということなのだろうか…
そして結構な速度で動いているであろう的が一瞬射線を通ったその刹那を逃さず、奇跡のハートブレイクショット!!
なんなん?
片目失って弱体化どころか前よりすごくなってない? どういうことなの…もう尾形はおしまいだぁ~とさめざめ嘆いたあのひとときは一体…思えば遠くへ来たものだ…
もうこれヴァシリ勝てないじゃん。パワーアップしちゃったもの、会得しちゃったもの狙撃手としての何かを。スランプ脱出どころじゃない、闇の闘気を極めちゃってるもの。
ていうかこの撃ち方だと、射線ギリギリの杉元が「今また俺の頭ブチ抜こうとしてなかった!?」ってならない? ちがうよ今回に限ってはお前はただの三角コーンだよ!!

嗚呼…ハイパーミラクルショットによってスローモーションで落馬する宇佐美。…を、抱きとめる鶴見中尉ィ~!!
お、王子様じゃん…(震)
芥子の花を背負った王子様だよ。なんだこの美しい散り際は? ゾイサイト並ですよ(?)
この世で最も愛した人に最も欲しい言葉で送られ、愛の証を受け取ってもらったトキシゲ。尾形の母親を商売女と嘲った割に、古風な遊女の指切りで幸福になっている構図に皮肉を感じます。
しかし揺らぐことなく最後まで一途なまま死んだんで、なんかもう「よかったね…」という気持ちで宇佐美に関してはあらゆることが昇華されてしまったな。

でもなんか…難しいですね。絶対一番じゃないのに君が一番だよって言ってくれる鶴見中尉…百之助ちゃんがかつて父に求めたのは、まさにこういう態度だったんだと思う。最悪嘘でもいいから本人にはそう言ってやれ、という。間違いなくあのころ尾形の思い描いた、パーフェクトコミュニケーションには違いない、と思うんだけど…
それでもやっぱり何だか虚しい気がしてしまうのは、それが需要と供給という形で交換される、断絶した交流だからかなあ。望む言葉を手向ける…なんかこう、有難いんだけど、それは退職金たくさんくれる、みたいな…終わりあっての有難さというか…(もっといい喩えないのか)
でもそれじゃあ幸次郎の方がマシなの?というといやいやってなるんだけどぉ。ううん。
しかし鍵を思い出したんならもうこれで安心だと全て託して死んでいったキロランケといい、思いが報われたと微笑んで逝った宇佐美といい、主要人物が退場する時は“本人は”満足して死ぬ傾向というのは共通していますね。夢を見て死ぬというか。
そう考えると夢に酔えず、むしろ拒否し続ける尾形がしぶとく舞台に残るのは必然…。

「ありがとよ宇佐美」
会心の一撃を放った尾形、なんとここで樺太以来ずっと巻いていた包帯をテイクオフ!
「お前の死が狙撃手の俺を完成させた」
なんだその効果線は!?
もうね、満を持して戻ってきたまさかの完璧元通りの顔(悲壮感ゼロ)といい、この「ババーン!」という感じの効果線といい下のコマといい、このページのすべてが面白すぎて宇佐美の死に様の耽美さとの反復横跳びが大変だった。ていうか正直笑いに負けた。
やっぱ復活以降ギャグキャラにシフトしてない? 私こういうシリアスな笑いに弱いんですよ。もうめちゃくちゃ元気そうじゃんキミ。美しく静かな愛の死亡シーンの間に挟んでくるなよその元気な様子を。
このポォンッのかわいさ何?
ここ一番でカワイイ顔見せやがって!!なんだそのドジっ子みたいな表情は!!「おっと(パシィ)」じゃないんだよ!!
この義眼?はロシアのあのお医者様が治療の一環で入れてくれてたのでしょうか? それとも後からゲットしたのかな。傷跡ぐらいは残るかと思ってたのにまさかの完璧復元に笑うしかない。杉元はマジで中身だけくり抜いたんですね…まあ猛毒付きと言っても思いっきり眼球だけに綺麗に刺さってたから、瞼をどうこうする必要はないっちゃないのかな。殺させる気満々で瞬きすらせず矢を受けたお陰だな!(狂気)
それにしてもこのポォン、江渡貝くぅんが作ったニセつるみと同じ挙動なのが不気味。
何の符合なの…? 尾形はやっぱ通過儀礼云々といい鶴見のマネしてる=ニセつるみということ?
人形…?傀儡…?偶像…? 誰よりもそうなることを拒否しているのに…?
しかしつるみは“葬式に来る父親”なんだよなぁ…幸次郎と違って…
うーん。何にせよ金カムのこういう演出面において発揮される意味深さ、というのはかなりすごいと思います。
そして今回はとにかくこの尾形完全復活ページのシュールさが本当に好きすぎる。チートスナイプ能力にトップクラスのギャグ要素も備えつつある尾形サイコー。完成してどこへ向かうのかわからんけどいいぞ尾形!お前の有坂銃で天下を取れ!除霊しろ!