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長文置き場

インカラマッの目的について(189話感想追記)

一旦今週の感想書き終わった後で何なんですが、今日ふとインカラマッの行動について「こういうことだったのでは?」とひとつ思いついた事があるので、189話の感想への追記としてメモっときたいと思います。別にブログ記事なんて好きな時にいくつ書いたっていい筈だよなあ?(自問自答)

のっぺらぼうが網走監獄に収監された事件…それによるウイルクの死を耳にしたインカラマッは、占いの結果と違う現実を信じ切れず、ウイルクの行方を探し始めた。
しかし殺人犯として捕まったのっぺらぼうはウイルクだったわけだから、当然今までインカラマッは手掛かりを見つけられてはいなかった。そんな中で脱獄騒ぎが起こり、アシリパが金塊の鍵を持っていることを何故かは分からんけど知っていたインカラマッは、巻き込まれるアシリパの身を案じて探し、接触した。
それとは別に、殺害現場の遺留品を回収した鶴見中尉が日露戦争が終わって帰ってきたので、こちらにも並行してコンタクトをとっていた。アシリパの保護と金塊強奪事件の真相、ウイルクを想うインカラマッの中ではどちらも重要なことだったから。

すると鶴見中尉は例の金塊を狙っているという。インカラマッは金塊などどうでもいい。アシリパが金塊の鍵を独占しているが故に狙われてしまうくらいなら、むしろさっさと誰かが手に入れてくれた方が好都合だと判断して手を組むことにする。
鶴見中尉が「ウイルクは既に殺され監獄にいるのっぺら坊は金塊のありかを知るキロランケの仲間」と言っていました…というインカラマッの言葉が本当なら、パルチザンのこともキロランケの存在も鶴見中尉の方からインカラマッに教えたことになる。
“キロランケ”があの時の彼だと何時、どう調べをつけたのかは分からないが、キロランケは第七師団だったし知っていてもおかしくはない。鶴見はインカラマッに対し、極東ロシアの解放運動から小樽に逃げてきたウイルクには、キロランケという仲間がいた筈だと説明した。
現在殺人犯として収監されているのっぺらぼうも、その仲間の誰かである。ウイルクは君の言うように、北海道アイヌを裏切るような真似をしなかったがために殺されたのだ。のっぺらぼうは知っている金塊の在り処をキロランケに伝えるつもりだろう。…みたいな感じでしょうか。
インカラマッは占いの結果もあり、まだ半信半疑だったが、競馬場で入手したキロランケの指紋が殺害現場に残されていた指紋と一致した。のっぺらぼうと共謀してウイルクを殺したのだ、と告げる鶴見に、とうとうウイルクの死を受け入れざるを得なくなる。
インカラマッはウイルクを殺したキロランケが許せないと訴えた。
「うんうんそうかい…コタンにいる谷垣という男を利用しなさい。そろそろ足の具合も良くなってるはずだ」

つまり、ラッコ鍋のあと「キロランケから自分の身を守らせる腹づもりで俺と寝たのか?」と谷垣は訊いたけど、インカラマッが「…いいえ」と否定したようにちょっと違っていた。
「ただ…私がこれから誰かに殺されたら、その時はキロランケが犯人です」
彼女はもしもの時に“キロランケを自分の仇として殺させる腹づもりで谷垣と寝た”んじゃないですかね?

そして網走。ウイルクは実際には殺されておらず、生きていたんだけど、目の前で殺されてしまった。やはりキロランケの手引きによって。
「よくもウイルクを…」憎しみを募らせたインカラマッは、刺すつもりのなかったキロランケのマキリに“自分から”刺さりに行った。
激しい苦痛の中、それでも刺さったマキリを絶対に離さずに、谷垣をじっと待つ。知らせるために。キロランケが犯人だということを。
そして今、忘れ物は持ち主のもとへ返された…。

まさに「死んでも許さない」ってやつですね。ウイルクってなんでこんなにモテんのかな? いや分かるんですけど! 能力が高い人間がモテるのは自然なことですけど! それでもさ!?(行き場のない憤り)
いやあいいですねインカラマッ。ガッツあるわ。なんか谷垣って愛されキャラみたいなので、この推測が当たってたら「インカラマッひどい!マタギに戻りたがってた谷垣を復讐に利用するなんて!」みたいな野次が飛びそうですけど、私は特に谷垣の人格に関心がないので「インカラマッの役に立ててよかったじゃないか」という気持ち。役目探してたもんな?
勘違いの復讐に燃えて人生棒に振った男が、惚れた女の復讐を今度こそ成就させる。美しいじゃあないですか…。
インカラマッが初めは利用するつもりだった谷垣に絆されていたのも本当だと思うし。計画的というよりは感情の発露で、結果予定通り利用することになってしまったという印象を受ける。

そもそも谷垣って言うほどマタギに戻りたがってたか? あいつ周りに影響されやすすぎてよく分かんないんだよ。
「鶴見中尉の背負っているものとは比べ物にならんだろう」とか言いつつ二瓶に絆されてあっさり軍帽焚き木にくべてたじゃないですか。まずマタギへ戻んのがすごいスムーズだったイメージなんですけど。キラウシにも「二瓶が俺を兵士からマタギに戻してくれた」つって既に戻ってるテイで話してたし。
鶴見中尉を裏切った尾形達を「俺の敵だ」と言いつつも、戻らずにコタンに馴染んじゃって、アットゥシとか軍服の上から着ちゃって。「意外と着心地はいい」とか言っちゃって。そしてフチのためにアシリパを無事に連れ帰ることが俺の役目だとか言って生まれてきた役目も見つけちゃって。
それからチカパシとインカラマッに出会い、疑似親子のようになって絆され、釧路さいはてラッコ鍋して…「鶴見中尉と通じてるぞ」にビビってた時点でもう鶴見中尉に金塊をっていう気持ちはゼロだよね。
むしろ網走では、アイヌの金塊を守りたいだけですって言ってたインカラマッの言葉が嘘だったことにショック受けて「女は恐ろしい…」とか二瓶の言葉思い出しちゃって、なんかもう鶴見中尉に金塊を渡したくない側みたいなリアクションするし。いやいや別にインカラマッの言う通り鶴見が手にしてもキミにとっては全然良くない!? 鶴見中尉の背負っているもの云々言ってた気持ちはどこいった!?っつー話ですよ。完全に杉元たちと仲間になってその空気に染まってるでしょ。
それでいて鶴見陣営に再吸収されてもそれはそれで平然としてるし…とにかくアシリパを連れ帰れればオッケーなのかなと思ったらこの復讐劇だし…。
いや別に何かを裏切ってるというわけじゃないんですけどね。ただただしがらみが増えていってるだけなんですけど。でもすごい、この金塊争奪戦において“うろちょろしてる”感が半端ない。
小樽ぶりに釧路で再会して「鶴見中尉の命令で俺を追ってきたのか?」と警戒する尾形と、谷垣の現実のギャップよ。こいつあの後結局一度も師団に戻らず今は女子供連れてあのバアちゃんのためにアシリパを迎えに来てて今後はマタギとして生きていく予定でいるんだよ。尾形も「マジで?」って感じだったでしょ多分。そりゃ秋田へ帰れって言うわ。マタギ野郎が邪魔をするなって言うわ。
谷垣のこの影響されやすさ、流されやすさっていうのは確信的に描かれてて、だからこそその部分を写真撮影ギャグだったり少女団ギャグだったりでイジられてるのかなって。
ただ谷垣の行動原理っていうのは、谷垣を流し続ける数々のしがらみそのものなんですよね。フチを見て年老いた母を思い出し絆され、チカパシを見て幼い頃の自分を思い出し絆され。自分と未来を生きたいと告げたインカラマッの顔を思い出しキロランケを刺した。
そんな過去に踊らされ続ける谷垣が今週「同志も、妻子も、捨てて来た」というアオリのついたキロランケに復讐の刃を向けたことを思うと、皮肉な構図に感慨深くならざるを得ない。善って何なんだろうな…(黄昏る)

とにかく構図としては谷垣を利用するインカラマッを利用する鶴見、って感じですか。ニシンに群がるクジラ…クジラを待ち構えまんまとありつくシャチ…そして殺し合って底に沈んで来たシャチの死骸を食らう気色の悪い生き物…。
この復讐劇のそもそもの発端として鶴見がインカラマッにキロランケを恨むよう仕向けたのは、単純に殺し合わせて金塊を手に入れやすくするためだったのか、それとも…。
今のキロランケの状況を知ったら、どういう反応をするんでしょうね。想像がつかないですわ。
網走監獄に転がっているであろうウイルクの死体もどうしたんだか。鶴見中尉が回収した筈ですよね。まああの頃の面影なんて無いんですが。お互いにね…。