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長文置き場

金カム212話「怒り毛」感想

落差激しっ…
いや、前回確かにこんなんで上手くいくわけないよォ!とかそれでいいんかい!?とか色々思ったけど、それにしたって痛い目を見すぎでは!? 緩やかな登りに「ヌルゲ~」とか言ってたらいきなり直下降に入って「ッギャー!!」って絶叫する鬼畜ジェットコースターみたいだよ!

悲しきモンスター

逃走経路を事前に用意していた周到なアシリパさん。えっ、やっぱ前回推測した通り鶴見に一応面通ししたのは薦めた杉元の顔を立てるためで、どの道アシリパに鶴見陣営に下る意思は初めから無く、「杉元はどうするんだ?」と再三聞いていたアシリパはやはりあの場で“杉元がついてこない”という選択肢も用意していたつもりだった?
そして「(ついてくるならば=まだ相棒でいるつもりならば)するなと言うな」という文脈に繋がる?
だから事前に逃走経路を用意していたのに、杉元はそれを今初めて知った…

で、これ多分、アシリパが逃げるつもりであること、白石は事前に知っていたんですよね?
前回アシリパが矢を射る隙を作った白石のゲロの少し前のコマで、どうも白石が口をムッとして口内にゲロをためているっぽいなと思ってたんですよ。
でもただガマンしてるだけで大事な場面で満を持してゲロったと見えなくもないし、前半の説教があまりにも冴えてたんで、なんか確変期なのかな?って…
でも因果関係が逆だったんですね? 白石だけはアシリパの逃亡の意思を知ってたんだ。逃走経路の確保にも協力した。そして杉元の意向によってはアシリパは彼を置いていくつもりであることも知っていたから、「オウお前そんなんだからこのままじゃ置いていかれちまうぞ」と友人として忠告してやったのがあの説教なんだ。

えっ…杉元かわいそう…。ピエロじゃん…!?
確かにアイヌはどうなる?と聞かれて答えられなかったり、鶴見の計画で北海道がどうにかなろうが知ったこっちゃないという態度だったりと、アシリパの今向いてる方向と彼の考え方が既に離れてしまっているということはハッキリしてきていたけれど…それを理解したアシリパから、杉元はとっくに見限られていたということ? 説得や和解をもう、諦められてしまっていたということ…!? そんな…!?
た、たしかに杉元はハイパーエゴイストで、自分だけでこうだって判断したことしか信じないバーサーカーで、頑固で、傲慢で、独り善がりで、それでいてフィジカルがアホみたいに強くて、手に負えないところがあるよ?
でもさ、一生懸命アシリパのためになることをしようって頑張ってたのは本当じゃん…!
逃げなければならないが一人では難しい、誰かの助力が必要だ…そうなった時にアシリパが真っ先に頼んだり相談するのは、もう杉元じゃないの?
確かに白石は逃げることのプロフェッショナルだよ? でも杉元はわからずやだけどさあ、白石が誇張して揶揄したような、「自分のために嫌がってるアシリパを鶴見に引き渡す」なんてことをする男ではないでしょ? ちゃんと嫌がってることを理解したら助けてくれる男だと思うよ? 競馬場で「そんなこと俺があの子に言うと思ってんのかッ」って言葉を聞いた白石は、そう思ったから杉元に発破をかけたんじゃないの?
あの天に射た毒抜きの矢だってさあ、不死身の杉元がクソデカボイスで「毒矢だッ」つって叫んだからこそあんなに第七師団はビビッてくれたわけじゃん…この逃走だってアシリパだけなら撃たれてなかったとしても、杉元がいなけりゃ初手の宇佐美でアッサリ捕まって終わってたわけじゃん…すごく力を借りてるよ…ひとこと…ひとこと言ってくれたって良かったんじゃないのか…?

いやあ前回まで自分自身がこの父親気取りの主体性ゼロの軟弱野郎ォ!とか言って杉元をdisっていただけにダメージでかいわ。アシリパはもう、杉元から歪な偶像化をされていると知ったあの似顔絵大会の時から依存を少しずつ切り離す方へと心をシフトさせていたの?
いやわかるよ、私も自分の言うことに影響を受けすぎてるなって人にしばしばネットで出くわした時に「あの人油屋にいるからいけないの。あそこを出た方がいいんだよ」ってノリで親切心からブロックしようかなって思うことあるよ?でも思うだけだよ…!
確かに今の杉元の依存の形というのは少し歪んでいるし気持ち悪いよ、でもそれにしたってさあ、キモいならどこがどうキモいのか、自分にとってどこが受け付けないのか、せめてしっかり考えてハッキリ本人に言ってやるのが人情ってもんなんじゃないですか😭(アシリパは“キモいから”が理由じゃないことはわかってます)
あんなに守りたかった“相棒”から、挽回のチャンスも反省の機会も与えられずにただ放っとかれて置いていかれるなんてあんまりだ😭 コイツとは分かり合えないと判断したにしても「お前とは分かり合えない」とせめて一言、真っ向からぶつけてやるのが最後の礼儀だと私は…うう…
自分が強過ぎるから自分が自分で見えなくて…それでも自分以外の誰かの役に立とうという気持ちがあって頑張っているのは本当で…その鬼神のような強さにアシリパだって何度も助けられたじゃないか…? ならそんな見捨てるような…今までありがとうここでさよならだと線を引くような…その“存在”ではなく“気持ち”を軽んじるような向き合い方を、“アシリパさん”だけにはして欲しくなかった😭
言い合いになったら勝てないという、シビアなところで子供であるがゆえの不可抗力だろうか?
でもさあ、二人に必要なのは杉元からの一緒に「何かをしよう!」っていう前向きな言葉なんかじゃなくて、アシリパの方から杉元に「するな」と言い返すことだったと思うよ。正しくなくたっていいんだ。それでも伝われば、きっと杉元は聞いてくれたのに…。

もうなんかすごい胸が痛いわ…ボロボロになっても銃で撃たれても、強過ぎるがゆえに“死ねない”不死身の杉元。
あと少しだと励まされながら、何発も銃弾くらって普通なら致命傷の傷を負った状態で、血塗れで、アシリパに手を引かれて走る。痛々しいよお…。
矢傷を負ってしまったヤックルが「ダメだ待ってろ!」とアシタカに言われてもヨロヨロとついていこうとする図を思い出した。
もう杉元はそういう動物に近いものがある。アシリパを飼い主と決めた獣だよ。熱したアスファルトの上を散歩させられているんだよお…
しかし初めて不死身の杉元の“本気”を目の当たりにしたアシリパ、顔が強張ってドン引きしている。網走のニセのっぺらぼう以来じゃないですかこんな表情は。
分かり合えないと切り捨てようとした杉元の“地獄行きの道理”が、こうして目に見える形で示されることになったのは少し溜飲が下がりますが…この恐怖が今後どう転ぶか?

傀儡

鯉登おおおお! ど…どうなんだこの傷は!?明治で助かる傷なのか!?
でもここで退場なんてかわいそすぎるでしょ…今まで信じてたものが全部ウソだったって聞かされて…なんにも問い直せないまんま、一応一時の仲間として一緒にやってきた男から心神喪失状態で刺されて脱落なんて…そんな…そんな顛末…
「いつも感情的になって突っ走るなと注意していたでしょう…」もはや無気力に横たわる鯉登に、もはや悼むような静けさで言う月島。
日露戦争に間に合わず、「早く戦争にならないだろうか」と、“死”を恐れていた過去を取り返すように待ち望んでいた若き少尉が…日露戦争の“英雄”の本気の前に、なす術もなく散る。
所詮この世は弱肉強食、強ければ生き、弱ければ…😭
でも月島さんの(昨日は素直に聞いてくれたのに…)ってモノローグはしんみりする所なのかもしれないけどちょっと面白くて笑っちゃった。あれが月島さんにとっては“自分の言うことを鯉登が素直に聞いてくれた構図”なんだなっていう認知の歪みが。あの激重ドン引き月島劇場を“忠告”というくくりで片付けるつもりか?
鯉登は杉元の“妙案”を最後まで信じていたし、基本疑うということを知らない青年なんでしょうね。世間知らずのボンボンだけど…でもそれは美点でもあるからな…。裏切られっぱなしでかわいそうだ…。
それにしても「あの男が恩に報いるとでも思ってるのか?」と鯉登が“信じてはならない人間”と言う認識を唯一初めから持っていた尾形だけが鯉登に“本当のこと”を教えていったと思うと皮肉な話だな。

そして鯉登が誰よりも信じた鶴見、戦闘不能となった鯉登とそれを支える月島に“一瞥”をくれて悠々と歩き去る。よ…養豚場の豚を見る目だッ!
月島が軍帽の下からじっとりとそれを見据え、“鶴見劇場”を相変わらず注視しているのは、月島にも“鶴見がどんな人間なのか”がまだ分からないからだと思いました。
一度は信じた満州の土に眠る戦友たちへの弔いの言葉、それがどのぐらい本当だったのか、どのぐらい方便だったのか、我々にも分からないように月島にも分からない。
せめてそれを、“鶴見という人間”を見定めたいのではないかと。鶴見が何を成すかということよりも。

ところで鯉登誘拐時から“共犯者”だったと判明した菊田と月島は久々の再会だと思いますが、ぱっと見この二人全然仲が良くなさそうですね。もはや仲が悪いと称せるほどのコミュニケーションすらなさそう。お互いにお互いの人格がまったく眼中にないみたいな。案外尾形はこの二人に挟まれる構図でスン…ってしてたのかもしれない。
あの時鯉登を罠に嵌めた四人のうち三人が鯉登が瀕死となったこの場に集結し、うち二人があっさりと横目にしていったわけですが。尾形はわりと初めから“距離を置いた”同情は持っていて、月島は初めは特に何も思ってなかったけど身近で世話する内に情が移ったという感じかな。この四人の関係性もまだまだ謎に包まれている。

いやあしかし最後のコマの杉元かわいそう。過去最高の負傷じゃないですか?(ヘッドショットは負傷とかいう次元ではない)
先週ボロクソ言ってたのにめちゃくちゃ今週庇いたい。杉元なりに…杉元なりに一生懸命やってるんでさぁ…!堪忍してつかぁさい…!