8番倉庫

長文置き場

金カム202話「狙撃手の悪夢」感想

狙撃手の悪夢=遠距離だと不敗なのに接近戦ゴリラに接近を許してしまう状況、ということですか。尾形も流氷越えの際に近づく杉元の影へ珍しく怯えた様子を見せていましたね。そうか、尾形が「ヤベェ杉元おっかねえ」ってだけじゃなくて、狙撃手全般にとってそもそも杉元の存在は悪夢なんだね…ヘイヘイ尾形にゃんビビってるぅ〜ってあの時はしゃいでごめんね。
そしてヴァシリにとって杉元の存在が悪夢なら…あの日出逢った尾形との記憶はさながら…甘い夢…(どうした?)

ロシアより愛をこめて

尾形は金カムのメインヒロインだとか、俺様主人公と俺様外国人キャラがヒロインを取り合う王道展開だとか、俺の手は血みどろなんだよと梅ちゃんからもアシリパさんからも身を引こうとしている佐一ちゃんが初めて堂々と俺のモンだと言える相手が出来て正直応援したい気持ちが湧くとか、私は全部マジで言っていたんだ。でもヴァシリはもっとマジだったんだ。
「あの男は覚えている 間違いなくあの場にいた」
ヴァシリはやはりあの国境越えの時にメンバーだった白石の顔を覚えていて、ktkrあの集団だと速攻で仕掛けてきた、という流れの模様。
「出てこい」 「私は死ねなかったぞ」 「あの時の続きをしよう」
ヴァ、ヴァシリ…お前…(純粋な想いに胸を打たれ立ち尽くす)
最期に眼に焼きついた尾形の顔…己を倒した者の顔を思い描きながら…なんという一途な目をしやがるんだ…?
イリヤが撃たれた時も「いまヴァシリの中に憎しみはない」という解説が付いていたけれど、じっと尾形を待つ彼の表情にもやはり憎しみや恨みといった感情は欠片も見当たらない。尾形と再戦希望か?と前週で予想した通りの動機ではあったが、しかしその表情には悔しさすらも滲んではおらず、ただあの男と再び会いたいという気持ちだけがある…。なんだろう、ある種のスポーツマンシップ? もうそれ以外のことなどどうでもいいという様子で尾形を求める表情には潔さすらも感じられます。
そして極め付けは九死に一生の刹那、胸元から覗いた、上手な上手な、尾形の似顔絵…
おま…お前…あの一瞬で…脳裏に焼き付いた名も知らぬ男の面影を…これほど鮮明に描けるほどに繰り返し、繰り返し思い返して…?
そして描かれた宿敵の肖像をいつも胸へと抱きながら…異国の地に赴き…残った命の全てを、再びの戦いに捧げんとして…!?
結婚!! 尾形は彼と結婚です!!!!(二週間前に用意したご祝儀をビリビリに破き燃やす)
負けたぜヴァシリ。お前がナンバーワンだ。

馴鹿、犬、鳥

狙われていたとしても白石を助けると意気込むアシリパは、今は亡きキロランケを彷彿とさせる態度で、こちらもあの国境越えを想起しているかのよう。でも今ここに皆を助けてくれる尾形は居ないからやめておいた方がいいね(皮肉)
「おいシライシッなんとか自分でこっちに来い 手当しないと失血死するぞッ」
正直この軍曹の発言が気遣い100%なのか私には確信が持てない。「気付かれてないのか? 尾形が杉元を見逃すなんて」という鯉登の発言からのコレで、そしてシライシが突っぱねたら帽子で気を引く陽動を始めた…ということで、半ば囮にする狙いも無くはなかったのではと邪推してしまう。誘拐メンバーに居たと判明してからというもの、今までの話も含めた軍曹への見方がちょっと変わって、冷静沈着無関心という以前にわりと色んな事にドライな人だなという印象が強まっている。
ところでこの状況、尾形が「シライシ走って三八式を拾ってこい」と国境で襲われた時出し抜けに言って白石が「出来るかッ」って返したのと鏡映しですね。“お前のために”危険を冒してこっちに来いという要求に「うるせぇ!はなから助けなんか借りるつもりはねえよッ」と切って捨てる白石は、思えば脱獄も一人で全部やるのがコツだと言って独力で逃げ延びてきた男。こうして今皆と共にいるキッカケも杉元に「アシリパさんを頼む」と頼まれたからで、それを考えると同じ無責任でも「三八式いるから(俺が)」あっちに行ってこいと傍若無人に頼んできた尾形の要求の方がまだ心象的にはマシなのかもしれない。
まあアレは尾形も本気じゃなく、とりあえず言ってみたみたいな感じだったけど。白石と尾形の絡みカワイイんだよな…尾形のでかい猫感が増す感じで…
「口噛み団子が忘れられなくて 行く先々でお婆ちゃんに噛んで貰おうと思って買ったオコメ…」
世界を股にかけると言っていた白石の性癖がすごいマニアックな方向に逸れていっているのがジワジワ来ますが…
「ダメだ!! 狙撃手が尾形なら狙いはアシリパだ」えっ…そうなるかな!? 谷垣が情勢のどこまでをどう把握してるのかいまいちよくわからない。
帽子で注意を引き付ける軍曹の作戦に「? からかって遊んでるのか?」とか、谷垣の尾形観ってなんか独特ですよね。二階堂を囮にしたら助けるような人間だと確信していたり、そうかといって窮地を抜ける手段としてあっさり民間人を皆殺しにしちゃうような奴だと思っていたり、「また尾形に嫌味を言われる」とか、なんというか妙な親しみがあるような…? ちょっとナメてるとも言えるかもしれませんが。まあ一番印象に残ってるのはラッコ鍋で尾形を床に寝かせる時の手つきの丁寧さなんですけど…(あれを考慮に加えないで)
まあ谷垣ほどではないにしろ皆どっかそういう所ありますけどね。尾形に違いないと言いつつ、能力への評価は揺るがない今のこの感じとか。何というか感情面では落ち着いているというか、独特のゆるさを感じる。この後相手がヴァシリだと知った時の皆の反応が楽しみです。

不死身のジェイソン

建物に入ってきただけでも気取られるほど殺気ギンギンで尾形のもとへ向かう杉元。背後でそんなに殺気を漲らせられてたんじゃ獲物も逃げるはずだと二瓶に言われた時を思い出します。
「次弾を装填して引き金に指をかける僅かな時間に…懐へ飛び込む。この銃では一発当てたとしても倒せず撃ち返される、確実に動きを止めたかったら白兵戦だ」
「尾形…俺の手でカタを付けてやる!!」
脳内シミュレーションもバッチリで“狩り”へ。やはり仕留めるならばゼロ距離でなくてはという感じですか。アイツに止めを刺すのは絶対に俺でなければならないという気迫を感じる。俺はヒグマよりも獲物に執着する…!
しかし勢い込んで突入したのに尾形じゃなくてマジがっかりの杉元、手にしていた味噌をふざけんなとばかりに顔面へシュートしあっという間にヴァシリを無力化。「誰だよテメェ」と言いながらも返事を聞く気は皆無、殺す気満々で顔面へ銃剣をぶっ刺そうとする。コワ~い!!!
「距離だ!! 距離さえあれば私は負けない…」
こいつはヤベェという事を一瞬で察しつつ、ヴァシリにも優秀な狙撃手としての矜持がある。素早く体勢を立て直すため階段を駆け下り、ひとまず距離をバリィ ザッザッザッ
うわああああああ!!!!
バイオハザードでこんなん見たッ! まあ不死身だし、ゾンビみたいなものですよね杉元もね。やばい。尾形が相手ならもう少し丁寧に殺してくれただろうけど、期待を裏切られたのもあって超容赦がない。手の甲に浮き出る血管が怖いよお!
「ハァ…尾形じゃないならもう死ねよ」とばかりに無言でとどめを刺そうとする鬼。しかしそんな暗黒の鬼の目に、不意に光が戻る。
正気に戻したのは殺そうとした男の懐から覗いていた、求めてやまない男の顔。
「なんだよこれ… お前が描いたのか?」
三角関係の完成である。
お前もアイツのことを…!? からのライバル同士の交流が生まれてしまう。やばい。やっぱりゴールデンカムイはラブストーリーなんだ。

それにしても尾形の似顔絵が超うまく描けてる上に真顔だから妙に可愛くてシュール。
「お前が描いたのか?」という杉元の発言もこの後「うまいじゃん…」と続きそうなほのぼの感があって何とも言えない。ポッケに紙と一緒に入ってる鉛筆がまたさあ…ヴァシリくんここで待ってる間ずっと暇つぶしにあの子の顔描いてたんでしょ…。
名前が判明してなくて良かったな。知ってたらうっかり相合傘を描きかねない。
顔見て一気に「おっ尾形じゃん」と正気に戻る杉元といい、双方マジで尾形にイカれている…やはり尾形はたらしこみの天才だった…?(狙った獲物を除く)
でもやっぱ一巻から出てたのはそういうことなんですよ。黒幕とかライバルとかそんなチャチなものじゃ断じてねえ。ヒロイン…なんだと思う(妄言)
妄言ついでに、99話で鯉登が気球に乗り込んできて杉元が「鯉登少尉…!!」って言ってるコマあるじゃないですか。その時背後にいる尾形が、顔を隠していたから目深に外套を被って目元に影が出来ていて、その様が非常に美しくてですね。初めて見た時から「白無垢みたいだな」って思ってたんですよ。
あっ、というか野田先生が「個性的な美形」と明言したので堂々と言えるんですが、100話無料の時に初めて読んだ時から私は尾形のこと「きれいな男だな」とずっと思っているので…そう見えているタイプの読者なんで…なんか17巻のカラー絵とかもたまに女に見えるっていうか…ヒロスエ的な顔だと思ってるから…(そう見えているタイプの読者とは)
なんか白黒の絵なのに「色白いんだろうな」って分かる感じというかね。どこから来るんだろう。同じ目だけど幸次郎は普通におっさんという感じだから、トータルの印象?
まあそれは置いといて、実際あの気球の場面は、脱走後初めて尾形が明確に他の陣営に移って行動しているということが第七師団に知れる場面でもあります。(どうもあの後鯉登が報告した時の鶴見の反応的に、夕張で尾形に会った事を月島は師団に報告していない気がする)第七師団という家から出て行った節目的な。
勇作との断絶が決定的になったあの夜明けの会話でも、そしてヴァシリとのスナイパー対決でも件のスタイルでした。いや単に目立たない装備というだけなんですけど。
でも杉元・勇作・ヴァシリの所に尾形一人で他から離れていく節目の時、尾形はいつでもあのスタイルだったわけで、それを思うと白無垢スタイルという冗談もあながち冗談に思えなくなってくるな…と、今回その姿をチョイスして描いたヴァシリの絵を見て改めて思ったのでした。
あっそういえば父上に会いに行った時もこのスタイルだったんだった…(重すぎ案件)

それにしても「は? 尾形じゃねーじゃん」という感じで静かにブチ切れながら理不尽なまでの圧倒的強さで殺しにかかる杉元最高だったな。久々にバーサーカーっぷりが見れてうれしい。
杉元は尾形の命の責任を引き受けたいんだろうな。そしてその事実を永遠にしたいんだ。だから、殺してしまったらある種の満足をしてしまうんじゃないだろうか。「でも俺アイツ殺したからな」という、奇妙な満足感。とにかく大きな、決定的なこと(それが“何故そうなのか”は問わず)を一つ自分の手でやって、取り返しがつかなくする。未来が決まる。地獄行きの特等席のチケットが手に入って、安堵する…(ペアシート)
それにしても尾形にゃん、本人は偶像崇拝否定論者なのに、自身が偶像にされがちなのは頭の痛い問題だ。偶像化…きれいなモノの宿命か…(何か言ってる)
せっかちな殺意ばかり向けられて尾形の地獄行きは早まるばかりだな。「血はむしろそなたを清めた」って言ってくれるユパさまみたいな求婚者は出ないものか。そういえば土方陣営ってそろそろ出番来るかな?(この流れで名前を出さないで)