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長文置き場

金カム176話「それぞれの神様」感想

関谷編がクライマックスです。私は関谷に登場以来ずっとムカついてまして、というのも狡くなぁい!?という部分がどうしても引っかかっていたんですよ。
土方に薬飲ますための「牛山はあんたのこと言ったら飲んだ」というのも嘘だったし、キラウシにも嘘ついて毒入りチカ渡して、門倉に出した交換条件の「俺が勝てば土方は助ける」も「まだ利用できるな…」とか言って案の定嘘だったし。
味噌汁を囚人仲間に飲ませたのも、三杯用意されているとはいえ自分は毒入ってることとトリカブトには独特の苦味があることを分かってるんだから自分は運試しの頭数に入ってない。それ考えると門倉へのロシアンルーレット的なあれも、その後の行動的に自分が毒飲んだ時のこと想定してない気がするし、本当に自分も同じ条件だったか疑わしい。
土方へのクジも半分は当たりと言いつつ言ってることからして全部ハズレだったっぽくないですか。牛山さんに至っては普通に騙して飲ませただけだし。
毒を飲ませて昏倒した後は手を出さず、あくまで毒の効果だけで死ぬかどうか見守ることにしているらしいのは分かるけど、しかし相手には"引いたのが毒かどうかを試す"というルールでゲームを仕掛けているわけで、関谷の言う“試練”には欺瞞がある。
どうせ飲ます気なんでしょ?神とか運命とか大層なこと言いつつ、フェアな条件で行わない以上それは運試しでも何でもないただの詐欺と毒殺では?不運だったと絶望する人間を神様の立場で愉しみたいだけなんでしょ?そんな体たらくで祝福だの何だの、お前それ尾形の前でも同じこと言えんの?(サバンナのAA)
…といったような憤りが、先週のエグい過去を明かされてもそれとこれとは別じゃなぁい!?とわだかまっていたのですが、今回土方さんがピンチを鮮やかに切り抜けてみせた様を「まさに奇跡だ!」と言って狂喜し死んでいった関谷を見て、"ああ、そうか、弱いから、卑怯な手使わないとそもそも土俵に上がれなかったんだなあ…"としんみり憑き物が落ちてしまいました。
土方さんにとってはこれも潜ってきた数々の修羅場のひとつでしかない。自ら意思を持ち生き残っている人間にとっては、危難はただの障害であり、誰かの意思が介在した試練かどうか等は問題にもならない。土方にとっては路傍の石に過ぎぬ通過を、運命の賜物だと言って有難がる関谷の姿は哀れです。
神様が関谷を裁くために土方さんを助けたなんてことはない。関谷のことなど神様は見ていない。土方が勝手に強くて関谷は勝手に弱かったからそれに負けただけ。
…と思う私も“現実”という神を信じているだけの哀れな子羊に過ぎないのですが。†憐れみたまえ†
「神のことはよくわからん…私は現世にしか興味はない」それでも“神などいない”と決めつけずに”わからない”、と線を引く土方さんはやはり大人。憂いを帯びた眼差しが渋いです。
「この世に生まれ落ちて命をどう使うか…私はそれでいい」
異世界転生モノを一刀両断する土方さんかっこいい。(そんな話はしてない)命を使う、命の役目、というのはこの作品にずっと現れるテーマですねえ。
そして先週まで散々醜態を晒していたというのに、関谷の心情を的確に分析した後「せめてこいつの刺青はうまく役に立ててやればいいッすねぇ」と〆る門倉さんめっちゃ渋い。肛門のぞきタヌキジジイの癖に…!
結局関谷は、意地の悪い言い方をすれば雑魚だったんだなって納得して今回の話を思い返すと、ギャグまみれだったことすらもやるせない。土方に「すごいぞまだ生きている」とか言ってる時には既に土方は手を打っていた。牛山のゾンビ化に「こんな奴は初めてだッ」と慌てている時牛山はトリプルアクセルを決めていた。キラウシに渡したチカは“本物”の運を持った門倉にシュートされ、更に再戦のシルキールーレットですら「あれ…なんかおさまったみたい」と即オチで生還された。
雑魚相手には神様気分で罰を与えたり出来ていたけど、本当に強い相手を前にすれば、関谷には小手先の毒と周到さしかなく。不運だとして、それは何かのための不運、ではない。“現実”に理由はない。この世に神はいない…ここはあの世じゃない…。
やるせねえ…やるせねえなあ…マスター一杯いただけますか…とびきりキツいやつをね…(私はワインならスパークリングワインが好きです)
でも関谷にとっては神は確かに居たんだ。そういうものですよね。そうだよねオベンチョ…

先遣隊は着々と距離を詰めている模様。軍曹がそろそろフラストレーションやばそうでうける。軟体動物と軽業の神、白石と鯉登少尉のポジションは近い…?
一方キロランケも着々と準備中。ソフィアさんかっけえ~~~早く会話して欲しい。
そして耳付き帽子ッ! 懺悔しますが目にして「尾形にかぶってほしい」と思うまで1秒かかりませんでした。
しかし被るのはソフィアさんの模様。新しい扉すぎる…
キロランケは脱獄させたかつての仲間大勢と合流する気満々。ええこわ…こっち四人しか居ないのに突然大集団になるじゃん…否が応にもそんな団体になれば目立つし…そして言葉の通じないその異国の集団のトップに近いとこにアシリパ連れてソフィアと共に混ざるつもりなのですか…やること派手っす…
「もしその人達の協力で金塊を見つけたとして、本当にアイヌのためになるのか?」
アシリパの言葉に、尾形は…驚いている…? そしてその後の、この表情…
何?????????(錯乱)
どどどどどういう目なのそれは!!!!尾形にゃん!!!!ねえ!!!!!!
アシリパさんが「アチャに会いに行く」という目的を失って以来、初めて尾形の前で口にした“金塊”というものに対して抱く意思の片鱗。
キロランケの言う事へ疑問を呈したことへの驚きか、“アイヌのためになるのかどうか”という問いの内容に対しての驚きか。
何にせよ尾形はやっぱりアシリパさんの“目的”を見定めようとしているような…何処かへ誘導するというよりも。アシリパの出方を待ってるような印象を受ける。
たった一コマの眼差しの温度が異質すぎて風邪ひきそう。山猫が見ている…。でもそれはそれとしてこの顔すっごいかわいいね!!!!
樺太やロシア極東で生活する少数民族が、彼らのままで居続けられるように…」
言うことがデカいと、その分そこに含まれないものに気を取られてしまいます。正しく聞こえれば聞こえるほど正しいかどうか不安になる。誰が何を守ろうとしていて、誰が何を壊そうとしているのか…
「それぞれの神様」という今回のタイトルはわりと作品自体の本質に近いような言葉のようにも思えました。ゴールデンカムイ、は金賞の神様、一等賞の神様という意味になるんだろうか。一等賞が出たからといって他の神様が神様じゃなくなるわけじゃないとは思いますが。
土方、鶴見、キロランケ、現状全ての陣営が登場した今回のお話。どの陣営にもそれぞれの神を擁する。弱い者は神に従い、強い者は神を目指す。関谷は心も力も強くなかったが、力が強いからといって心が強いわけではない。そして逆もまた然り。この神の文脈の中で、アシリパさんはアイヌのカムイの元から出ないのか、出ていくのか。白石はどこでブレーキをかけるのか。そして尾形は…尾形…お前は一体何をどう目指して…(通常営業)