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長文置き場

金カム166話「頼み」感想

こないだ「“お前らに張ってやる”と握手を交わした時から思えば随分遠くまで…。」とか言ってたら、在りし日の三人の絵と“思えば遠くへ来たもんだ”の煽りで追いうちのように超絶しんみりした。これは今度おまけアニメになるという巨大鳥の話の一コマですね。だから記念カラーなのか。
でも今の話の流れ的にもピッタリですね。既刊を読み返してると、このエピソードが一番この三人が金塊とか何も気にせず和気藹々としてる感じがする。白石とかお互いのことまだあんまり知らない頃でさ、アシリパさんに湯たんぽがわりにされてさ…鳥に連れ去られそうになったアシリパさん見て杉元は焦りまくるんだけど、白石は吹き出すの…その温度差とかさ…その後はえげつない鋭さの鳥の脚食べて…なつかしいな…

しかし星屑notロンリネス。ひとりじゃないって素敵なことね〜
尾形がまだアシリパさんが貸してくれたのであろうレタラさんのご親族の毛皮を着ているう! 2コマだけど!!
かわいい…特に2コマ目がかわいい。似合わなくはないが似合うとも言い切れない。モコモコに着られてる。生きろそなたは美しい。
まだ流石に具合悪いようで、無言無表情で地味に顔色真っ青なのがシュールですね。目は覚めたけど楽にはなってない、という一番げっそりする状態とみました。こんなスン…って顔して実は相当な身体的消耗・疲労感・不快感に耐えているのだと思うとグッとくるな?

どうもデキる印象を受けてならないイトコのシャーマンの方が、皆の今後の旅路もトナカイ肩甲骨占いで占ってくれるという。マッちゃんのよりすごそう。
しかしこれで占いが本当に信憑性あるものだったら、シャーマンの人の力は"本物'であるということで、勇作殿はマジで先週除霊された可能性があるな。超うけるな。
相変わらず占いに関してはクールな態度のアシリパさんに対し、結果に一喜一憂してしまう白石。さすが恋のために脱獄王になった男…
出た結果は「後方から人が来る」。基本となる本筋に他の筋が合流するように、二股に別れた亀裂。普通に考えれば先遣隊の合流ですけど、大穴で鶴見中尉だったらどうしよう?(ないよ)
ていうか占い結果が具体的過ぎませんかね!?不吉な結果は、そのまんま「良くないことが起こる」とかでいいじゃん…「誰か死ぬ」とかトナカイさんハッキリ言い過ぎぃ~

世話になったウイルタの家も後にすることになり、別れの挨拶を交わす面々。尾形は貸してもらった馴鹿の横で、いつも通り背中でご挨拶。
こうやって大人数で、他にお礼言う人が居るような場面では基本こんな感じに何のアクションも取りませんけど、偽コタンで牛山を連行するため杉元と鈴川の手が塞がってた時なんかは「悪いが先を急ぐんでね」って一応別れを告げたりしてるんですよね。とことん合理主義の男よ…
尾形ってウイルタの人々から見たら、「この男がいたらこの地から馴鹿が居なくなる」と畏怖するほどの神業的な銃の腕を持ち、戻ってきたら物凄い高熱を出して寝込み、何か悪いものに取り憑かれていて、しかし一貫して無言無表情…という得体が知れないにも程がある人間だったな。多分後になっても変わった男だったなあってたまに思い返すと思うよ。

ていうかあのモコモコ帽子もらったの? カワイイ…
何ちゃっかり貰っとんねん…あったかかったの? 気に入ったの? それとも風邪ひいたし寒いだろうからってウイルタの人がくれたのを素直に受け取ったの?
E 軍服
E 脚絆
E しにがみのマント
E 双眼鏡
という一貫した装備を貫いてきた尾形に、
E モコモコの帽子
というアイテムが加わりニコニコしてしまう。カワイイカワイイ!!
まあアンマーがあの帽子でヘッドショットを免れた、防護性能の実績が大きいのだろうとは思いますが。
死にかけたのに「いいよいいよ」って笑って言ってくれるアンマー本当に気のいい人…死ななくて良かった…
心から真摯に謝るキロさんも熱い男ですね。そして白石の離脱に話は移る。
先々週アシリパと逃げる残るの話をしていたのがキロランケにバレてから、一旦みんなで何事も無かったかのように団欒に戻りつつ、出立の区切れに改めて話すつもりで保留していたのでしょう。大人の振る舞いすなあ…
何だかんだ道中の付き合いも長いキロランケと白石。「俺から"逃げる"必要なんかねえんだぜ」とちょっと切なそうに肩に手をかけるキロさんが色男です。ここはここで仲間意識みたいなもの感じますもんね。確かに俺はお尋ね者だが、それでも俺を知るお前が俺に対してコソコソする必要なんか無いんだという、一人の男としてのほろ苦い感傷。
一方「入れ墨の写しは各地に二枚も現存してることだしシライシがどっか行っても問題ない」的な、相変わらず各陣営を俯瞰したような合理的理由を述べつつ、チームの一員として「べつにいいとおもう」みたいな異議なし態度を示す尾形にゃん。君ほんとに白石に関心ないな。「ふーん。帰るんだ」みたいな…どうせこの後のやりとりも「ふーん。やめるんだ」みたいな感じで眺めていたんだろ。
そして笑顔で暖かく礼と別れを告げるアシリパ先生。器がでかい…爽やかなお人やで…後光が差しとるわ…

ここからの流れはベタにじーんとしてしまいますね。ドラえもんとかその辺でしか中々味わえない感動ですよ。白石の根底にはこういうピュアさがあんだよな…
タイトルの「頼み」は二度にわたって杉元からアシリパさんを託されたあのやりとりのことだった。どちらの時も、杉元の頼みに対して白石は息を呑むような顔をするだけで、返事をしていなかったんですけども。やっぱり強く心に残っていたんですね。
いつ逃げ出すか分からないと見張られ、各地で脱獄犯として名を馳せてきた白石は、信頼されるという状況とは無縁の人生を送ってきただろうと思います。だからこそ託されたその重みが白石を縛る。そして、杉元がアシリパさんを託せるほど信頼しているのもまた、仲間の内では白石だけなんでしょう。やっぱ二人で生還した真冬の川の思い出が大きいのかな。今ゲンジロちゃんともっかいそれやりそうですけど。
走って追いかけるけど、どんくさい白石がかわいい。気が変わったのか?とキロさんに問いかけられ、照れ隠しの邪な理由を述べて「か~え~れ~」言われる。女の肉づきにはうるさい全身麝香の色男だけど、女遊びには手厳しいキロランケさん。
「ったく…」と笑うアシリパさんイケメン。つくづくチンポに対してあっけらかんと言及しすぎのアシリパさん…誰のせいなの? チンポ先生のせいか…
程々にしとけと釘を刺され「これがあるから大丈夫ッ☆」と取り出されたのは先週もらった子どもの男性器の偶像。ポワポワトーン張られてるけどそれ不吉なんだよなぁ…童貞偶像の勇作殿は凶弾に斃れられたからなあ…
と思ったら案の定誰も居ない火の傍で、馴鹿の肩甲骨がバリバリバリッと音を立てて死を描く。怖いよおッッ!!!
悪兆にもほどがあるでしょ。二股が一本になってからの切れ込みだから合流後に事が起こる?それは関係ない?
普通に考えると「後方から人が来る」を白石がクリアした途端占いの結果が変化したので、一番死亡フラグ立ってるのは白石なんですが。やだぁ…こんなにピュアな友情を感じさせておいて…
しかしキロさんも指名手配されてる中でロシアに向かってる訳ですから危なさではダントツ。実際ヴァシリたちは即撃ってきたし。
尾形もわりとバックボーン描かれてきたので死への支度が完了してしまう可能性はある…やだやめて…死んでも生き延びて…
色々考えると主人公アシリパさんと不死身の杉元ぐらいしか安心できる人物がいない。ヘンケはじいちゃんだし、鯉登は「死体で帰ってくるかもしれませんよ」という船上での会話がフラグだし、軍曹もすべてを失った過去回想終えてるから常にフラグだし、ゲンジロちゃんも「この金塊戦争が終わったら俺結婚するんだ」というお約束のフラグを立ててしまっているんだよ。
チカパシとエノノカちゃんは大丈夫と思いたいですが。大団円=全員生還とは全然信じてないので先行きが恐ろしい。
それにしても八甲田山の映画やっぱり観ようかな。しかし陰惨な事件のWiki読むのを密かに愉しむ趣味がある私も、八甲田山Wikiはかわいそうでかわいそうで…助けに来た幻を見ちゃってぬか喜びしちゃう下りとか超落ち込みます。

そしてリュウですよ。リュウまじで好き。リュウも絶対に死んでほしくない。
突然の悪天候によって前方の橇を見失った杉元側の橇で、犬たちに混じって一緒に橇を引いていたリュウだけが違う方向に行こうとして引っ張られる。
リュウ何やってんだ列から外れるな」と杉元から叱責されるも、橇の轍を見れば、リュウだけがはぐれた鯉登側の橇の方角が分かっていた。かしこ~~~い!!!
有能だしかわいいしリュウは最高だな。それにしても一匹だけ正しい答えが分かっていたのに杉元に信じてもらえず無視されてしまう辺り、偽アイヌ村の尾形を連想させる。やっぱり同じポジションなんだよ!!でもそれならゆくゆくはリュウみたいに「こいつには何度も助けられている」って尾形に合流オッケーくれてもいいんじゃないすか杉元さん!?(手噛むのとヘッドショットを一緒にしないで)


というわけで尾形の話はひと段落して、これからまた杉元側の話に戻るようですが。今週から杉元サイドになるかなあと思っていたらやっぱりそうだった、ということは、ここしばらくの尾形のまとまった過去篇のサビは、先週最後の「夢の終わりに振り返った勇作さんの姿が、目覚めて目に入った現実のアシリパさんの姿と完全に重なった描写」だったということで。
こないだ伏せったーで下記のようなことを書いたんですよ。

まあこれ書いた時は「いつの間にか勇作と重ねるようになっていて、少なくとも“行こう…アシリパ…”あたりからは自覚的だった」という解釈で書いていたんですけど、今は「夢から目を覚ましたあの瞬間が自覚の瞬間だったんじゃないか」という解釈に寄ってきてます。不在の弟の影をアシリパさんに重ねていたのはあくまで無自覚だったが、それが夢の亡霊によって突き付けられたという。
まあでもどっちにしろ勇作とアシリパさんを重ねた描写は変わらないので、とりあえずどっちでもいいです。つまり平たく言うと、この樺太尾形篇で「尾形はずっとファザコンだと思っていたがどちらかといえばブラコンだったんじゃないか」という新解釈に辿り着かされてしまったんですよね。

勇作さんとの回想によって、ヴァシリとの対決の際に生まれた疑問、「“狙撃手の条件”にそこまで見識を持っているならば、何故谷垣狩りの時に二階堂を助けたのか?」ということにも解答に近いものが与えられたと思うんです。
「ヤケクソだったんじゃない?」とか「自分だけ助かりたいという気持ちに欠けているんじゃない?」とか「二階堂の“頼み”があったからエゴが欠けてる尾形は従ったんじゃない?」とか色々言ってきましたが、そのどれも微妙に違っていて微妙に合っていたような。
尾形はたぶん、弟の言ったことを未だに気にしているんじゃないでしょうか。
“いつか分かる日”が、勇作さんを撃ったあの瞬間に来たのかというとちょっと判断がつきかねますが。
尾形は理由があれば躊躇なく殺せてしまう。それはたぶん勇作さんの言う“罪悪感のある人間”とはちょっと外れてるんだけど…殺さない理由がある時は、何かを考えるようにしながら助ける選択をとってきた、これまでの尾形の行動。あの無言の眼差しの裏に浮かんでいたのは、弟に言われた"罪悪感"というキーワードだったんじゃないだろうか?
フチを巻き込まなかったのも、二階堂を助けたのも、谷垣を助けたのも、今までの行動で“情”のようなものが垣間見えるように思えた裏にあったのは尾形自身の人間らしさというより、あの言葉について考える理性…人間らしさの検討。
母と己を捨てた父。母が己を捨てて欲し続けた父。その父から己が与えられなかったもの全てを与えられた弟。弟から伝えられた父の言葉。"人間の条件"。
与えられなかったもの。だから知らなかったもの。己には無いもの…

多分勇作さんに人殺しをねだったあの会話まで、尾形は“良い狙撃手の条件”通りの人間だった。失うものも何もない尾形は、冷血で、獲物の追跡と殺人に強い興味があるような人間だった。
そもそも“死”というものの価値観が絶対的に勇作とは相容れない。鳥を死なせて得た獲物は人にとって良いもの。葬式は延々と待ち続ける狂った女の日々に儀礼という機会を与えるもの。敵の死は戦場の目的。
尾形にとって“死”は生産的な手段だった。何より、母に捧げた死を過ちにしないためにも、尾形にとっての"死"は手段や経過と同じ比重のものでなければならなかった。
しかし“父は”そう言っていなかったと、兄様はけしてそんな人じゃないと抱きしめられ、勇作によって冷血に焼石を投げ込まれた尾形は、条件通りの人間ではいられなくなった。
戦場でようやく安定する筈だった自己を全否定された尾形は、手段として勇作を殺す。しかしその瞬間に尾形の内には取り返しのつかない"特別な死"が宿った。
それを罪悪感、と規定してしまうのは、やはり少し限定的に過ぎる気がします。もっと漠然としていて原始的な情動のイメージがある。
やっぱ"未練"って言葉が似合うかな…。殺さなきゃ良かったかな、っていうもう一つの可能性が、死ぬまで心の底に付きまとうような。

勇作さんの言葉は、私にはやはり恵まれた者の傲慢のように感じられます。結局この世は起こる現実がすべて。実際に人は人を殺せてしまうし、殺している。そして"良い狙撃手の条件"に当てはまるような人間も、やっぱり人間であることに変わりはない。戦場には尾形みたいな人だって他にも少なくない数いるでしょう、ヴァシリさんのような。許容できない存在を否定することが正義とは思えません。少なくとも、戦争を必要とする世界ならばそんなことは誰にも言えない筈です。
おそらく勇作さんにだってそれは分かっていた…腐っても軍人の息子なのだから。ただそれでも尾形だけには、そうあって欲しくなかった。自分の想いと通じて欲しかった。
それは尾形に向けられた勇作さんのエゴです。存在への傲慢な執着。でもそれこそが"情"というものなんですよね。
“お前だけは”と求めてくる存在が尾形の人生には居なかった。いつも捨て置かれ、寄る辺なく、拾われるのを待って獲物を置いていくような関わり方しか出来なかった。
己の人生に足りないものの全てのような父が、勇作さんだけに与えていた言葉が、己のしてきたことと真逆だったと知った瞬間の尾形の心情は察するに余りある。
ただあの瞬間の勇作さんは“同じ息子”として兄に話しかけていたのではなくて、父の言いつけに共感し守りたいと感じている一人の男として尾形にそれを伝えていたんじゃないだろうか。自分にも譲れないものがあるのだと。分かって欲しい。分かり合いたいと。
先週は「裏切ったな!僕の気持ちを裏切ったな!父さんと同じに裏切ったんだ!」というテンションで歯噛みしてしまいましたが、でも彼だって選ばずに祝福された存在であり…誰しも人間は自己に誇りを持ちたいと願っているのであり…持ち得ている彼のものを、彼自身が信じて誇ることは、自然なことなんだ…
それをこの世で尾形にだけは言っちゃいけないだろという憤り、その気持ちは今もありますが、しかし勇作が尾形のことを慕っていたということは伝わってくる。それなのに、兄が“捨て猫”だということは彼にだって分かっていた筈なのに、傷つけるようなことを言った…腕の中の兄を想って涙を流しながら見せたその思いやりの無さが、どこから来たのかというと…そういうことなのかなと今は思うんですよね。あなたにだけは分かって欲しい、的な…(by炎のたからもの)
そしてその“お前にだけは”という向けられるエゴの愛情は、もしかしたら尾形に一番足りていなかったものなのかもしれなかった。
尾形が己を助ける方法は選択肢が少なすぎたので、銃でしか解決出来ませんでしたが。
勇作さんとのやりとりを忘れられずに、夢に見て、憑りつかれるほど今も残っている“未練”あるいは“罪悪感”の裏…そこにあるのもやっぱり、勇作さんを憎めない、今になって彼を惜しむ、尾形のどうしようもない愛のような気がする。

ということで今は「子供は親を選べない。あの兄弟は凶悪だったが…愛があった」と鶴見中尉調にやるせなく嘯きたい気持ち。かなしい。
ただ尾形がブラコン優勢なのかファザコン優勢なのかは保留にさせてください。勇作のあの言葉は父上の言葉であるわけだし、元凶は父上であるわけだから…
今はなんかこう、神=キリスト=精霊の三位一体みたいな、幸次郎=勇作=〇〇の精霊部分にアシリパさんが入ってくるんじゃないか的な気持ち。
尾形がのっぺらぼうについて土方に聞きたがったのは、やっぱ動機が気になったからなんじゃないですかね?「遺体を残虐にもバラバラにしておきながら、丁寧に全員の所持品に傷を付ける行為は、どこか懺悔のようなものを感じる」ここを気にしていた理由に、この“罪悪感”の自由研究が当て嵌められる可能性ないかな。
それにこの時「つまりのっぺらぼうはアイヌの金塊を樺太経由で持ちだそうとして失敗したのが今回の発端なわけか」と知り、のっぺらぼうの仲間のパルチザンがいるという情報も知った。そして今、そのキロランケと共に樺太に居るわけですよね。
“のっぺらぼう”を基準に動いていると考えると尾形の行動はわりと筋が通っている。交渉用のため単独行動で刺青人皮を探す(杉元とエンカウントして死にかける)→退院してリベンジしたところ茨戸で刺青人皮+交渉相手もまとめて発見する→のっぺらぼうを一番知ってる土方に取り入って情報得る→夕張でアシリパがのっぺらぼうの娘だと知るという流れ。
鶴見中尉からの離反とのっぺらぼうへの興味がどう繋がるのか、罪悪感の自由研究というだけではまだモヤッとした部分が残ってて仮説という仮説も出せませんが。ただ尾形はファザコンなので、花沢中将の何かがのっぺらぼうへの興味に関係しているんだろうなとは予想します。
そしてそこに巻き込まれる娘の存在は、尾形にとって弟を重ねさせるものらしい。ただウイルク曰く「アイヌを殺したのは私じゃない」なんだよな。それを尾形も知らないだろうから、アシリパさんと共にそれを知った時このこんがらがった状況がどうなるか…
それにしてもウイルクからして男がつけるものであるホホチリをアシリパさんに与えていたことがエピソードとして描かれましたし、つくづくアシリパさんは女の子扱いされませんね。何か物語上の理由が出てくるのか、それともただの設定なのか?
しかし何にせよ兄ちゃん面する尾形というのはキュンとするものがあります。今週の白石離脱話になった時の対のコマだけでちょっと兄妹っぽくてほっこりしてしまったもんな。

尾形編の間は毎週水曜、平日ど真ん中なのに深夜本誌読んで興奮して眠れなくなって大変でした。あと死ぬほど面白いのに続きを読むのが死ぬほど恐ろしいという未知の体験をした。
尾形は全然モノローグが無いから何考えてるのかわかりにくいと評判ですけど、その“行動で語る”っていうとこが逆に多くのものを想像させます。というよりきっと言語化できるような人格・情緒のキャラではないんだと思う。リュウがモノローグで喋り出したら嫌じゃん?(やはりリュウを引き合いに出す)
リュウは喋らないけれど、土壇場でレタラ達に立ち向かったり、二瓶の銃を追いかけてきたり、取り返そうとしたり、そういう行動から“気持ち”が想定できる。
そういう際立った対象性が文学的な薫りすら漂わせて、すごい実験精神あふれるキャラクターだなあと改めて思います。“移入”しなければ感情が分からない。
茨戸篇とか今見ると超切ないですね。新平は、尾形と何もかも真逆なんですよね。血統が繋がってない。それでいてずっと一緒に親子として暮らしてきた。そして、殺せない。
尾形はその血統に苦しめられ、ずっと違う所に捨て置かれ、殺してしまった。尾形は強かったから。
今、新平に言い放った「親殺しってのは…巣立ちのための通過儀礼だぜ。テメエみたいな意気地のないやつが一番ムカつくんだ」という言葉が胸に刺さります。羨ましいんだなって。自分と違う真逆の弱い存在が。だからムカつくんだ。
そして代わりに親父を殺して、助けてやったのを思うと本当に孤高だなと思います。新平は新たな人々の居る地へ新しい家族とともに旅立ち、尾形は一人で阿鼻叫喚の地獄に分け入る。
尾形ってカッコイイよな…。ハードモードをよく生き抜いてますわ…。死んでも生き延びて欲しいすわ。